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2008/09/01

力車的寓話

私の家から職場まではリキシャが足となっている。
リキシャというのはバスのような乗り合いではなく、所謂タクシーのような個人貸切の乗り物である。

これが安い。職場まで10分の距離を一人で借り切る。さぁ、はうまっちょ?
1ルピー 2円でお考えください。
ユタ州バカにしないでよぉのあの時代の話であるが、今の若い人は、ご存じないかもしれない。巨ちゃんである。うっしっし。
正解は20ルピーだ。

どのへんが安さの秘密かと問われれば、オート三輪なのである。
オート三輪といえば、タクシーが円タクと呼ばれ東京都内どこまでいっても1円で乗れた時代に活躍したダイハツ・ミゼットを思い出していただければよい。
そう、あのすぐ転ぶ奴だ。歌謡界では笠木シズコがブギウギとかいってたあの時代の話であるが、今の若い人はご存知ないかもしれない。
無論、私も若いのでご存じない。

さて、ことほど左様に安いリキシャであるが難点もある。
雨が降ると動かない。乗車拒否。ぼられる。おおげさ。まぎらわしい。
日本であれば速攻JAROに訴えられそうなリキシャであるが、天竺であるためJAROはない。
よかったねリキシャ。

雨が降ると動かないというのは致し方ないとしても、乗車拒否だの、ぼられるというのは非常に困る。
人口の多い天竺であるため客はいくらでもおり、安い客は乗せなくても商売が成り立つということ、そして各リキシャは法人組織に属しているのではなく、個人であり、日割りのリースで車を借りて営業しているらしい。こうなると、クレームのだしようがない。
そんなわけで、外国人を見るといいカモが来たとボッたくろうとするから困る。

私の顔は外国人に見られるせいか、20ルピーの距離を平気で100ルピーだなどと言ってくる。
いくら私の顔が日本人離れしたフランス人に見えようが、彫刻のような造詣のギリシャ的好青年に見えようが、私は天竺に住んでいるのである。相場は知っているのだ。
5倍の値段をふっかけられて引き下がる私ではない。
いいか、わたしはピエールじゃないのだ。ムッシーじゃないのだよ。
100ルピーなんてありえないじゃないかと10分ほどやり取りをすることになる。
で、会社に遅れる。
それじゃ、いかんじゃないか、ピエール。
たのむぜ、ピエール。いかすぜ、ピエール。ところで、ピエールって誰?

JAPANESE/ENGLISH

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