ある晩のこと。帰宅すると件の市原悦子的メイドがまんじりともせずにテレビを眺めている。
私 「テレビを音も出さずに眺めてゐては、面白くなゐと思うのだが」
「そこのところはどう考えてゐるのだね?」
悦子 「テレビが問題です」
私 「テレビが問題とゐうより、君のほうが心配だと思うのだが」
悦子 「音がでません」
ことによると、天竺人はリモコンという文明の利器を知らないのだろうかと心配になり悦子にリモコンを渡す私。
私 「リモコンのこのボタンを押してみたまヱ」
悦子 「駄目です。音がでません」
そんなことはなかろうと、自分でボリュームアップのボタンを押す私。
私 「ゑゑヱ。テレヴィの音が小さくなってゐくではないか」
悦子 「そうでせう。リモコンがゐうことを聞かぬのでございます」
驚愕至極。早々に映像受信機を直接いじってみること小一時間。
摩訶不思議。驚天動地。なんと彩度調整のボタンで音が大きなってゐくではないか。是は全くもって不思議な映像受信機ナリ…って壊れとるやんけ。
正気に戻った私は、早速リース業者に文句を言うよう悦子に指示するも、悦子曰く、音が出るので天竺のテレビとしてはマシなのですと文句を言う気もない様子。
…時刻は11時をまわる。
悦子 「では、おやすみなさい」
私 「やすんでおしまいなさい」
やすんでおしまったおかげで、ようやくプライベートの時間を満喫する私。都知事の弟のごとくブランデーを傾けながら、夜霧よ今日もありがとうと、ひとりごちておると、ようやく音の出るようになったテレビでは、本日の映画が放送されだす。
チャップリンの「黄金狂時代」だそうだ。
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