天竺には公共の乗り物が五種類ある。
一つ目はリキシャ。二つ目はバス。三つタクシー。四つ浮世の醜い鬼を。五つ五人の仲間 ボルテスⅤに 全てをかけて やるぞ 力の尽きるまで 地球の夜明けは もう近いというやつである。賢明な読者諸氏においては気づかれたことと思われるが、最後のボルテスⅤは嘘だ。そんな乗り物はない。
嘘の乗り物の話をしても仕方がないので、本当の話をしようと思う。天竺にはコードネームRX-78 通称・超高速攻撃型モビルスーツ・リキシャという乗り物がある。このリキシャ初号機は、開発責任者モヘット博士自身の手で強奪。南米奥地に隠匿されてしまっていたのだが、テストドライバーであり神秘の行者であるガンジー・オセロが、博士の手よりリキシャを奪還。天竺にて公共の乗り物として普及したという逸話があるらしい。このリキシャは超高速攻撃型モビルスーツだけあり、日本で見受けられる一般の乗り物とは大きく異なる。まず、タイヤが三つしかない。ワイパーが手動だ。エンジンが30年前の代物らしく雨が降ると水が入って動かない。さらにスピードメーターがいい加減だ。おまけにバックもできない。やはり攻撃型にカスタマイズされているだけあり、無駄を省いた設計スタイルを採用していることが容易に推察できるものである。
天竺では、この基本設計を受け継いだ 量産型リキシャが幅広く普及しており、街角に赴けば5台10台と連なったリキシャの編隊を観測することができる。リキシャのジェットストリームアタックと呼ばれる編隊の合間に見受けられるのがタクシーである。このタクシーも侮れる代物ではない。タクシーといえば、それは日本にもあるではないかと思われる旨もあるだろう。なるほど、タクシーと名が付くだけあり日本のタクシーとの共通点もないことはない。まず、タイヤが四つある…以上だ。やはり、この天竺タクシーも無駄を省いた設計スタイルを継承しているらしく、サイドミラーがない。ワイパーも手動。エアコンがない。スピードメーターがいい加減。すぐエンストするなど攻撃型に特化した仕様スタイルをとっている。
以前、私の拠点から南に1時間ほどの時間を要するビクトリア・ステーション方面に出向いた際の話だ。
拾ったタクシーには、どういうわけかドライバー以外に男が乗っていた。はて?ナビゲーターであろうか?問いただしてみるも要領を得ない返事。だが、30分後に謎が解けた。高速道路の真ん中でエンストしたのだ。その男と一緒にエンジンがかかるまで車を押す私。なるほど、エンストした時に車を押す用の人だったのね。10Mほど押しまくり「ブ・ブル・ブルルン!」「さぁ、かかったぞ飛び乗れ!」高速の真ん中で生きた心地がしなかった。
ことほど左様に攻撃型に特化したリキシャ、タクシーである為、ドライバーも只者ではない。まず、尊法精神が皆無である。そもそも交通法規などという前時代的な代物は、この天竺には存在しないようである。信号など稀にしか見受けられないのだ。大平原に広がるルート66というわけではない、人口が溢れんばかりの天竺だ。いつでもどこでも交通渋滞なのにも関わらずだ。道路は車体の海と化しているわけだが、只者ではない天竺ドライバーたちには交通法規など必要ないらしい。車線などというものは完全に無視だ。隙間が僅かでもあればグイグイ車を押し込んでいく。隣の車との距離は3cmしかないのだが全然平気だ。また、車間距離もへったくれもない。前の車との距離が10cmしかないにも関わらず、急ブレーキを踏まれてもオカマを掘るようなヘマはしないのだ。
いつか話したとおり、天竺ではたまに大雨が降るのだが、タクシーもリキシャも雨で前がほとんど見えないにも関わらずワイパーを使わない。なにせ手動だからだ。しかしながら、平気でスピードをだしてカッ飛んでいく。大渋滞に加え道路の両脇は人で溢れ返っているにも関わらずだ。人間業とは思えない。見えないのにどうやって運転しているのだろうか?どういう仕組みになっているのかさっぱりわからないが、やはりニュータイプなのではないかと睨んでいる。ララァもそうであったが、やはり秘密は額のポッチだと思われる。どうもあの額のポッチで天界と交信している節がある。
おそろしいことだ。
恐らく軌道上の衛星からの時刻情報と軌道情報(アルマナックデータ)を額のポッチで受信し、衛星の位置データと電波が届くまでの伝播時間から自分の位置を弾き出しているのだ。原理的には3個の衛星からの電波を額のポッチで受信すれば、それぞれの距離を計算し3次元的な位置を特定できるはずだ。
そんな馬鹿なというなかれ、天竺人は九九を99の段まで憶えている輩である故、3次元的位置の測定計算を瞬時にやってのけたとしても、全然不思議ではないのである。
JAPANESE/ENGLISH




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